美容業界のことはわからない。ロックメディアの作った美容室「ROCK HAiR FACTORY」の裏側 ―激ロックエンタテインメント 村岡俊介さん×RIKAさん
ラウドロック、メタルを中心としたコンテンツを公開する「激ロック」と、ロック全般を扱う「Skream!」。この2つの音楽メディア運営に加えて、「激ロックエンタテインメント」ではライブハウスや、アパレルショップ、ミュージックバー、ライブ・DJイベント等の企画運営も行っています。さらに同社は美容室『ROCK HAiR FACTORY(ろっくへあふぁくとりー)』をプロデュース。ROCK HAiR FACTORYは2018年6月のオープン前から多くの注目を集めました。
そこで今回は、同社の代表取締役である村岡俊介(むらおかしゅんすけ)さんと美容室の店長であるRIKAさんのもとへ。
さまざまな事業を手がけてきた同社がなぜ美容室の運営に乗り出したのか。そんな疑問とともに、ロックに特化した美容室の内側に迫ります。
10年くらい前から美容室の構想はあった。事業スタートの理由とは?
―激ロックエンタテインメントでは、WEBメディアやフリーペーパー以外にもライブハウスや、アパレルショップ、ミュージックバーなどリアル店舗の事業もいくつか展開されていますが、なぜ今回「美容室」をつくろうと思ったのですか?
村岡:激ロックは、「ロックミュージックを立体的に見せていく」というコンセプトのもと、さまざまな事業を展開してきました。その中で「次に何をやろうか」と考えたとき、ロックファッションは服だけでは成立しないと気づいたんです。かっこいい服を着ていても、ヘアスタイルが中途半端ではきまらないですよね。ロックファッションをつくる上でのヘアスタイルの重要性を感じたので「ROCK HAiR FACTORY」をつくることにしたんです。
ただ実は10年前くらいから美容室の構想はありました。長い間タイミングを見極めていたのは、いくら僕らがいい箱をつくっても、最適なスタイリストが見つからないことにははじまらないから。そんなとき、1年ほど前から弊社が運営しているバー「Music Bar ROCKAHOLIC」や、激ロックDJパーティーにも遊びにきてくれている現店長のRIKAに出会い、僕からオファーしました。それで美容室の事業が動き出したんです。
RIKA:ライブハウスに遊びに行っていて、最初に村岡から声をかけていただいたときはもうびっくりしました。いつも通り友だちと遊びにきていただけだったので、オファーされるとは思ってもいなかったんです。
話を聞いたときは、メディアが美容室をプロデュースするという点に興味が湧きました。自分が関わったらどうなるんだろうと思うとワクワクして、立ち上げに参加してみようと思ったんです。
―求めていたスタイリストを見つけたことで構想が形になっていったと。しかし「美容室」は専門的な分野。さらにコンビニよりも多いと言われるほど競争の激しい業界です。リスクに対する不安はなかったのでしょうか?
村岡:まったくありませんでした。美容は競争過多な業界ですが、僕が調べた限りではロックに特化した美容室がなかったのも事業を立ち上げた理由の一つです。ロック好きのお客さまの中にはSNSで同じようにロック好きな美容師さんを偶然見つけ、美容室に行くこともあると思います。でもどちらかというと、髪を切ってもらったときに、会話の中で担当スタイリストが「ロック好き」とはじめて知ることのほうが多い。ロック好きな美容師がいることが前提で、お店全体がロックに特化した美容室は他にはありませんでした。だから、ロックファンが集まれる美容室として、トータルで特化していこうと思ったんです。
それに、僕自身、メディアの運営やミュージックバー、ライブハウス、アパレルなどを事業として展開してきましたが、そういった場所で働いた経験はありません。だから、はじめてのことに対しての危惧はあまりないんです。逆にまったく知らない業界だからこそ、お客さまと同じ目線を持てるのは一つの強みですよね。アパレルだったら、購買者側の視点、美容室なら髪を切られる側の視点。中途半端に経験しているよりも、何も知らないほうがお客さまの目線でお店づくりができると思うんです。
ただ、ロックに特化した美容室にハマるスタッフを探すのは、想像以上に難しかったです。オープン日が決まっているのに、なかなか見つからず、焦りました。
RIKA:スタッフの選考では、ロック好きということは前提としてありました。あと、オープン後はカラーオーダーが多いことを想定していたので、カラーが得意であることを重視しました。また「ロック」と言ってもさまざまなジャンルのバンドがあります。例えば、「マキシマム ザ ホルモン」などのラウド系のバンドと、「ゲスの極み乙女。」や「BUMP OF CHICKEN」といったポップサウンドでは音楽性が分かれています。両サイドのお客さまの支持を得るためには、店のスタッフも両翼を担う必要があるので、音楽性の幅が広がるよう、スタッフのバランスも重視しました。